「お兄ちゃんはピーマンが食べられないのに、弟はピーマン大好き。でも弟はトマトを絶対に口にしない」——。38歳の由美さん(仮名)は、毎晩の献立に頭を抱えていました。
小学2年生の長男・大翔くんは緑の野菜全般が苦手で、ブロッコリーもほうれん草も首を横に振ります。一方、年中の次男・陽太くんは緑の野菜は平気なのに、トマトやにんじんなど赤い野菜を見ただけで泣き出すこともあります。
「同じように育てたのに、どうしてこんなに違うの?」と由美さんは不思議に思いながらも、2人の好き嫌いを考慮すると作れるメニューが極端に限られてしまうことに疲れを感じていました。ママ友からは「うちは1つのメニューしか出さないよ」と言われますが、それでは片方が全く食べないこともあり、現実的ではありません。
このような兄弟で偏食のタイプが異なる悩みは、実はとても多くの家庭で起きています。この記事では、兄弟の偏食が異なる理由を整理し、年齢・性格に合わせた具体的な対応策を解説します。
- 兄弟で偏食が異なる4つのパターンとその原因
- 年齢別(2〜3歳・4〜6歳・小学生)の具体的な声かけと対応法
- 兄弟を比較せずに偏食を改善する「共通ルール」の作り方
- 食事以外で栄養バランスを整える手軽なアプローチ
兄弟で偏食が違うのはなぜ?——4つのパターンと原因
同じ家庭で育った兄弟でも、偏食の傾向が異なるのは珍しいことではありません。厚生労働省の「乳幼児栄養調査」によると、子供の偏食に関する悩みを持つ保護者は約3割に上りますが、兄弟間で偏食の傾向が一致するケースのほうがむしろ少数です。
パターン1:上の子が偏食・下の子は何でも食べる
最も多いパターンの一つです。上の子は味覚が敏感で初めての食材に慎重な一方、下の子は上の子の食べる様子を見て育つため、食への抵抗感が低くなりやすい傾向があります。日本小児科学会の知見でも、第一子と第二子以降では食行動の発達に差が見られることが指摘されています。
このパターンで注意すべきは、下の子が食べられることを上の子へのプレッシャーに使わないことです。「弟は食べてるよ」という一言は、上の子の自尊心を傷つけ、食事の時間をさらに苦痛なものにしてしまいます。
パターン2:下の子が偏食・上の子は食べる
末っ子は家庭内で甘えが通りやすい環境にあるため、「イヤ」と言えば別のものが出てくるという学習が偏食を強化するケースがあります。上の子が問題なく食べていると、親は「下の子もいずれ食べるだろう」と楽観しがちですが、対応が遅れると偏食が定着する可能性があります。
パターン3:苦手な野菜がそれぞれ違う
兄はピーマンとセロリが苦手、弟はトマトとなすが苦手——というように、苦手な食材が重ならないパターンです。このケースでは献立のやりくりが最も難しくなりますが、裏を返せば「共通して食べられる食材」が必ず存在するということでもあります。
パターン4:両方偏食だが傾向が正反対
兄は肉が好きで野菜を嫌がり、弟は野菜は食べるけれど肉や魚を避ける。こうした正反対の偏食を持つ兄弟の食事は、親にとって最も負担が大きいパターンです。個別に対応しようとするとメニューが2種類必要になり、共働き家庭では現実的に難しいこともあります。
偏食の原因は「味覚」「性格」「環境」の3要素
兄弟で偏食が異なる背景には、個人差に基づく3つの要素が複雑に絡み合っています。
味覚の個人差
子供の味蕾(みらい)の数は大人の約1.5〜2倍あり、苦味やえぐみに対する感受性が高いことが知られています。しかし、その感度には個人差が大きく、同じ兄弟でも苦味に敏感な子とそうでない子がいます。遺伝的な味覚感受性の違いが、兄弟間の偏食の差を生む一因です。
| 味覚タイプ | 特徴 | 苦手になりやすい食材 |
|---|---|---|
| 苦味敏感型 | 苦味・えぐみに強く反応 | ピーマン、ゴーヤ、ほうれん草 |
| 酸味敏感型 | 酸っぱさに強く反応 | トマト、酢の物、柑橘類 |
| 食感過敏型 | ぬめり・繊維質が苦手 | オクラ、なす、きのこ類 |
| 匂い敏感型 | 青臭さ・独特の香りが苦手 | セロリ、春菊、にら |
性格の違い
慎重な性格の子は新しい食材を警戒しやすく、偏食になりやすい傾向があります。一方、好奇心旺盛な性格の子は「食べてみよう」というチャレンジ精神から、偏食が少なくなる傾向があります。兄弟であっても性格は異なるため、食に対する態度も変わってきます。
環境要因(生まれ順・家庭内の関係性)
第一子は離乳食から親が慎重に進めることが多く、食材の導入に時間がかかる傾向があります。第二子以降は、親の経験値が上がるだけでなく、上の子が食べている姿を見るモデリング効果があるため、食の幅が広がりやすいと言われています。
年齢別の具体的な対応策
兄弟の年齢が異なれば、効果的なアプローチも変わります。それぞれの発達段階に合った対応を選ぶことで、無理なく偏食を改善する手がかりが見つかります。
2〜3歳:感覚遊びと「一口ルール」
この年齢は味覚の発達が急速に進む時期です。苦手な食材を「食べなさい」と言うよりも、まずは触れる・匂いを嗅ぐ・見るという感覚体験から始めるのが効果的です。
具体的な声かけの例を紹介します。
| 場面 | NG声かけ | OK声かけ |
|---|---|---|
| 食べない時 | 「食べなさい!」 | 「これ何色かな?触ってみる?」 |
| 兄弟比較 | 「お姉ちゃんは食べてるよ」 | 「今日はこれを見るだけでOKだよ」 |
| 一口食べた時 | 「もっと食べられるでしょ」 | 「一口食べられたね!すごい!」 |
この年齢では、食卓の雰囲気を楽しくすることが最優先です。食べない日があっても、食事の時間自体が嫌いにならないことが大切です。
4〜6歳:お手伝いとチャレンジ記録
保育園・幼稚園に通う年齢になると、「自分でやった」という達成感が食へのモチベーションになります。
この年齢で効果的な方法は以下の通りです。
- 料理のお手伝い:野菜を洗う、レタスをちぎるなど簡単な作業から。自分が関わった料理は食べようとする意欲が高まります
- チャレンジシール台紙:新しい食材を一口試したらシールを貼るシステム。兄弟それぞれ別の台紙を用意し、自分のペースで進められるようにします
- 食材の「役割」を伝える:「にんじんは目を元気にしてくれるよ」など、食材の栄養を子供に分かる言葉で伝えます
注意点として、「デザートを食べたいなら野菜を食べなさい」というご褒美型の交渉は避けましょう。野菜を「罰」、デザートを「報酬」と位置づけてしまい、野菜嫌いを強化する逆効果が知られています。
小学生:知識と自主性の活用
小学生になると論理的な理解力が高まるため、栄養の知識を伝えることが効果を発揮します。
- 栄養の「見える化」:「今日の夕食で緑・赤・黄色の食材がそろったね」など、バランスを一緒に確認する
- 自分で選ばせる:「ブロッコリーとほうれん草、どっちを食べてみる?」と2択で提示し、自分で決めた感覚を持たせる
- 調理体験:包丁や火を使う料理を任せることで、食材への理解と愛着が深まります
- 目標の自己設定:「今月はきのこを3回食べてみよう」など、本人が設定した目標のほうが達成しやすい傾向があります
兄弟を比較しない「共通ルール」の作り方
偏食が異なる兄弟への対応で最も重要なのは「比較しない」ことです。しかし、個別対応ばかりでは親の負担が増えるばかり。ここでは、兄弟共通のルールと個別対応を両立させる具体的な方法を紹介します。
共通ルール1:「一口チャレンジ」は全員同じ
苦手な食材が出たとき、「一口だけ試してみよう」というルールを兄弟共通で適用します。上の子も下の子も同じルールなので、「自分だけ食べさせられている」という不公平感がなくなります。
一口食べて「やっぱり苦手」なら、それ以上は強制しません。ルールの公平さが、兄弟間の不満を防ぎます。
共通ルール2:「食べられたこと」を個別に認める
食後の声かけは兄弟それぞれに個別に行います。「大翔くんは今日ブロッコリー一口食べられたね」「陽太くんはにんじんスティック触れたね」と、それぞれの進歩を具体的に言葉にすることが大切です。
共通ルール3:メニューは1つ、取り分け方で調整
献立を兄弟別に作るのは現実的ではありません。基本のメニューは1つにして、盛り付けや取り分けで調整する方法が効率的です。
| 基本メニュー | 上の子向け調整 | 下の子向け調整 |
|---|---|---|
| 野菜炒め | 苦手な緑の野菜を少なめに | トマト系は抜いて別皿に |
| カレー | 野菜を小さく刻んで溶かす | にんじんは星型に抜いて見た目を変える |
| 味噌汁 | 具材を選ばせる(きのこ抜き等) | 好きな具だけ多めに入れる |
性格タイプ別の声かけガイド
年齢だけでなく、子供の性格タイプに合った声かけも偏食改善のポイントです。
慎重派の子(新しいものに警戒する)
慎重派の子には段階的なアプローチが有効です。いきなり食べさせようとせず、「見る → 触る → 匂いを嗅ぐ → 舐める → 一口食べる」という5段階のステップを設け、どの段階でもOKとします。
声かけ例:「今日はブロッコリーの匂いを嗅いでみようか。食べなくても大丈夫だよ」
負けず嫌いの子(競争心が強い)
兄弟間の比較は避けつつも、「昨日の自分」との競争は効果的です。「昨日はピーマン1切れだったけど、今日は2切れ食べられるかな?」というように、自己ベストの更新を促す声かけが合っています。
声かけ例:「先週は3つ食べられたよね。今日はどうする?」
マイペースな子(周りに左右されない)
本人の興味関心と食べ物を結びつけるのが効果的です。恐竜が好きなら「ブロッコリーは恐竜の木みたいだね」、電車が好きなら「にんじんスティックは線路みたいに並べてみよう」と、食材を遊びの延長線上に置く工夫が響きます。
声かけ例:「このブロッコリー、何かに似てない?」
食事以外でできる栄養サポート
兄弟それぞれの偏食に完璧に対応しようとすると、親が疲弊してしまいます。食事だけで全ての栄養を摂ることにこだわりすぎず、おやつの時間を活用して栄養を補う視点も大切です。
おやつタイムの活用法
おやつは「お楽しみの時間」であると同時に、食事で不足した栄養を補う「補食」としての役割があります。
- 野菜スティック+ディップ:食事では食べない野菜も、おやつとして出すと食べるケースがあります
- スムージー:苦手な野菜を果物と混ぜることで飲みやすくなります
- 栄養補助食品の活用:噛んで食べるタブレットタイプなら、おやつ感覚で取り入れられます
特に兄弟の偏食が異なる場合、「おやつなら兄弟とも同じものを食べられる」という共通の体験が作れると、食の時間がポジティブなものになります。

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よくある質問(FAQ)
Q1. 兄弟で全く違うメニューを出すべきですか?
基本的には同じメニューを出すことをおすすめします。別々のメニューを用意すると親の負担が大きくなるうえ、「自分だけ特別扱い」が当たり前になり偏食が固定化しやすくなります。同じメニューを出したうえで、盛り付けの量や形を調整する方法が効率的です。
Q2. 上の子の偏食が下の子にうつることはありますか?
可能性はあります。下の子は上の子の食べる様子を観察しており、上の子が「これ嫌い」と言うのを見て同じように避け始めるケースがあります。対策としては、上の子が苦手な食材を食べているときに過度に注目しないことが重要です。
Q3. 偏食がひどくて栄養が心配です。病院に行くべきですか?
極端に食べられる食材が少ない場合(5種類以下)や、体重の増加が標準曲線から大きく外れている場合は、小児科への相談をおすすめします。一般的な偏食であれば、成長とともに食べられる食材が増えていく傾向がありますが、不安な場合はかかりつけ医に相談するのが安心です。
Q4. 「お兄ちゃんは食べてるのに」と言ってしまった場合、どうフォローすれば良いですか?
言ってしまった場合は、すぐに訂正するのが大切です。「ごめんね、比べてしまったね。○○くんは○○くんのペースでいいんだよ」と伝えましょう。完璧な親である必要はありません。フォローの姿勢そのものが、子供に安心感を与えます。
Q5. 兄弟それぞれの偏食に対応していると、食事作りが大変です。何か工夫はありますか?
「ベースメニュー+トッピング方式」がおすすめです。たとえば、うどんやどんぶりなどのベースを共通にして、上に乗せる具材を各自で選ばせます。これなら調理の手間は一度で済み、兄弟それぞれが自分で選んだ感覚を持てるので食べる意欲も高まります。
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参考情報
- 厚生労働省「平成27年度 乳幼児栄養調査結果の概要」(https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000134208.html)
- 文部科学省「食に関する指導の手引(第二次改訂版)」(https://www.mext.go.jp/a_menu/sports/syokuiku/)
- 日本小児科学会「小児の食事と栄養に関する提言」(https://www.jpeds.or.jp/)
- 厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2020年版)」(https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/kenkou/eiyou/syokuji_kijyun.html)
- 文部科学省「学校給食実施状況等調査」(https://www.mext.go.jp/a_menu/sports/syokuiku/)
まとめ
兄弟で偏食が異なるのは、味覚・性格・環境という3つの要素の個人差によるものであり、育て方のせいではありません。
大切なのは、兄弟を比較せず、それぞれのペースを尊重すること。共通ルールとして「一口チャレンジ」を設けつつ、年齢や性格に合わせたアプローチを取り入れることで、無理なく食の幅を広げていけます。
食事だけで完璧な栄養を摂ることにこだわりすぎず、おやつの時間を「補食」として活用するのも賢い方法です。兄弟一緒に同じおやつを楽しめる時間は、偏食の悩みを超えた家族の大切なコミュニケーションにもなります。
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